薄毛に悩む男性がAGA治療を始める際には血液検査が必要になることがあります。
「血液検査は必要なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、薄毛の原因や最適な治療法を選択するためには血液検査が欠かせません。
この記事では、AGA治療における血液検査の必要性や具体的な検査項目、費用について解説します。
そして血液検査を受けられる場所や検査結果に基づいたAGA治療の選択肢についても詳しく解説します。
AGA治療を始める際に血液検査が必要な3つの理由
AGA治療を受けるためにクリニックを受診すると、血液検査を受けるように案内されることがあります。
適切なAGA治療を行う上で、血液検査は欠かせないプロセスです。
AGA治療において血液検査が必要な理由には、以下があります。
血液検査では、AGA以外の病気の可能性もチェックできます。薄毛にはさまざまな原因が潜んでいる可能性があり、見た目だけではAGAかどうかの判断が難しい場合も多いです。
AGA(男性型脱毛症)が起こる原因には男性ホルモンが大きく関係していますが、甲状腺の異常がある場合にも薄毛になる場合があります。甲状腺は体のエネルギーを作るためのホルモンを出しており、この甲状腺の働きが悪くなると、髪が抜けやすくなることがあります。
また、貧血も髪に悪影響を与える原因です。貧血になると、体中に酸素を運ぶ赤血球が減ってしまいます。すると、頭皮にも十分な栄養が行き渡らなくなり、髪の毛が細く弱くなって抜け毛が増えてしまうのです。
血液検査では、これらの甲状腺ホルモンや貧血の状態を調べる項目があります。
検査の結果、甲状腺の異常や貧血が見つかった場合はAGA治療だけでなく、それぞれの症状に合った治療も必要になります。
AGA治療では、フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)といった薬がよく使われます。これらの薬は、AGAの原因となる男性ホルモンの働きを抑える効果があります。
しかし、薬は常に最適な効果を得られるだけではなく、体質に合わなかったり、用量の過不足により副作用が出たりすることもあります。
肝臓は体の中に入ってきた薬の分解や解毒をする働きを持つ臓器です。この肝臓が弱っていると、薬をうまく分解できず、体に負担がかかってしまうことがあります。
例えば、お酒を多く飲む人は、肝臓に負担がかかりやすい状態です。もし、肝臓が弱っている状態で薬を服用すると、薬の効果が強く出過ぎてしまう場合もあるのです。
AGA治療の血液検査には、肝臓の働きを調べる項目があります。肝臓の働きが弱っていると判断された場合には、薬の種類や量を調整したり、場合によっては、薬を使わずに治療する方法を検討したりする必要があります。
AGA治療薬の効果には個人差があるため、効果が出にくい人に同じ薬を使い続けても、時間とお金の無駄になってしまう可能性があります。
AGA治療の血液検査は、薬の効果を予測するためにも使用されます。 また貧血の場合には薬の効果が出にくい場合があるため、検査の結果によっては薬の効果が出やすくなるように鉄剤を処方するなどの対応も行います。
このように、血液検査の結果を参考にすることで、患者さんにとってより効果的な治療法を選択することができます。
AGA治療の血液検査で確認する主な項目とは?
AGA治療を始める際の血液検査では、下記のような項目を確認します。
AGA治療で行われる一般的な血液検査の項目
AGA治療で行われる一般的な血液検査項目としては、以下のようなものがあります。
肝臓は薬や食べ物を分解したり、毒素を処理したりする、とても重要な役割を担う臓器です。
肝機能検査では、この肝臓が正常に働いているかを調べるために、血液中の特定の酵素の量を測定します。AGA治療薬の中には、肝臓で代謝されるものがあるため、肝臓の働きが悪くなっていると、薬がうまく分解できず、体に負担がかかってしまうことがあります。
AST、ALT、γ-GTPは、肝臓の細胞が傷ついたときに血液中に漏れ出す酵素の量を表す数値です。これらの数値が高い場合は、肝臓に負担がかかっているサインです。
甲状腺ホルモンの異常は、脱毛の原因の一つです。甲状腺の機能が低下している場合や、過剰に活動している場合、AGAに似た脱毛症状が現れることがあります。
これらのホルモン値を確認することで、甲状腺に関する問題がないかを評価し、必要であれば治療を優先します。
AGAの進行や脱毛に影響を与える可能性がある栄養素の一つが鉄です。鉄不足によって起こる鉄欠乏性貧血は、AGAと似た症状を引き起こすことがあります。
血液中の鉄やフェリチン、ビタミンB12、葉酸の値を確認することで、栄養状態(特に貧血の状態や原因)を評価し、栄養不足が原因の脱毛であれば、その対策を講じます。
白血球数やCRPは全身の炎症状態を示すマーカーです。慢性的な炎症は、毛髪の成長を妨げる可能性があるため、炎症の有無を確認することも重要です。
糖尿病は、毛細血管を傷つけることで毛髪の成長に悪影響を与える可能性があります。
糖尿病の診断は空腹時血糖値、随時血糖値、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)、そしてHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を指標に行います。特にHbA1cは過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するため、糖尿病が原因の薄毛かどうかを判断する際に有用です。
このように、AGA治療を効果的に行うためには、身体の状態を把握するための血液検査が欠かせません。また治療の効果を確認するためにも、AGA治療開始後も定期的な血液検査が推奨されています。
AGA治療では遺伝子検査を行うこともある
AGA治療では、遺伝子検査が行われることもあり、遺伝子を調べることでAGAになりやすい体質かどうかを判定する検査です。
遺伝子検査は、私たちの体を作るための情報を読み解く検査で、その情報の中には髪が薄くなるリスクも含まれています。
AGAは遺伝的要因が大きく関わっているため、遺伝子検査を行うことで、より的確な治療方針を立てることができます。
遺伝子検査は採取した血液からDNAを抽出し、AGAに関連する遺伝子の型を調べます。
遺伝子検査の結果は、あくまでも統計的なものであり、必ずしもAGAを発症するとは限りません。しかし、遺伝子検査を受けることで、AGAのリスクを把握し、予防に役立てることができます。
ホルモン検査もAGAへの影響の確認には有効
AGAは男性ホルモンが大きく影響しているため、男性ホルモンのバランスを調べるために、特殊なホルモン検査が実施される場合があります。
テストステロンは、男性ホルモンの一種で、筋肉や骨の成長、性欲などを促す働きを持つホルモンです。
テストステロンはAGAの原因となるジヒドロテストステロンの材料となるホルモンでもあり、AGAの発症にも関与しています。
テストステロンが酵素の働きによって変換されたものが、ジヒドロテストステロン(DHT)です。
DHTはテストステロンよりも強力な男性ホルモンであり、AGAの直接的な原因物質と考えられています。DHTは毛母細胞という髪の毛を作る細胞に作用し、髪の毛の成長サイクルを乱すことで、薄毛を引き起こします。
性ホルモン結合グロブリン(SHBG)は、性ホルモンの働きを調整する役割を持つタンパク質です。
SHBGはテストステロンやDHTなどの性ホルモンと結合することで、これらのホルモンが過剰に作用することを抑えています。
これらのホルモンの血中濃度を測定することで、ホルモンバランスの乱れやAGAの進行度合いを把握できます。
AGA治療の血液検査を受ける流れや頻度
AGA治療を受けるにあたって、血液検査はどのような流れで行われるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、AGA治療における血液検査の方法と流れについて、順を追って詳しく解説していきます。
血液検査を受けられる場所と予約の方法
AGA治療の血液検査は、実際に治療を受けるクリニックで受ける場合が多いです。
AGA治療を行っているクリニックは、ほとんどの場合予約制となっています。まずは、クリニックのホームページや電話などで予約を取りましょう。
予約の際には、以下のような点を確認しておくとスムーズです。
- 初診の場合の予約枠
- 血液検査の希望
- 保険適用の有無
- 持ち物
初診の場合は、問診や検査などに時間がかかるため、専用の予約枠が設けられていることがあります。具体的な検査項目や、どのくらいの時間がかかるのかを事前に確認しておくと安心です。
AGA治療で血液検査を希望する旨を伝えておきましょう。クリニックによっては、血液検査が必須でない場合や、費用が異なる場合があります。
AGA治療は自由診療となるため、保険適用外の可能性があります。費用について事前に確認しておきましょう。AGA治療は保険適用外となる場合が多いですが、AGA以外の原因で脱毛が起きているケースなど状態によっては、初診料や再診料など、一部保険適用となる場合があります。
健康保険証や服用中の薬があれば持参しましょう。過去の血液検査の結果なども、参考になる場合があるので持参しておくと良いでしょう。お薬手帳があると、現在服用している薬や過去の治療歴がわかりやすくなるので、持参することをおすすめします。
クリニックによっては、オンライン診療に対応しているところもあります。遠方にお住まいの場合や、忙しくてクリニックに通うのが難しい方は、オンライン診療も検討してみましょう。オンライン診療の場合でも、血液検査が必要となるケースがあります。その場合は、提携医療機関での受診や、検査キットの郵送などで検査を受けることが可能です。
血液検査の前のカウンセリングの内容
クリニックを受付した後は、カウンセリングルームまたは診察室にて、カウンセリングを受けます。
カウンセリングでは、主に以下のような内容について、担当のカウンセラーとじっくり話し合っていきます。
具体的にどのような症状で悩んでいるのか、いつ頃から症状が出始めたのか、などについて詳しく伝えましょう。例えば、「額の生え際が後退してきた」「頭頂部の毛が薄くなってきた」「抜け毛の本数が増えてきた」などです。
どのような治療を希望しているのか、治療費や治療期間、副作用などの不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。治療法には、内服薬、外用薬、メソセラピー、植毛などさまざまな方法があります。それぞれの治療法のメリットやデメリット、費用、期間などを比較検討し、自分に合った治療法を選択することが重要です。
食生活や睡眠時間、喫煙習慣、飲酒習慣など、生活習慣に関する質問もあります。これらの生活習慣は、AGAの進行に影響を与える可能性があります。
AGAは遺伝的な要素も大きいため、家族にAGAの症状があるかどうかも聞かれることがあります。家族にAGAの方がいる場合は、遺伝的にAGAのリスクが高い可能性があります。
これらの情報は、医師が適切な治療方針を判断するためにとても大切なので、包み隠さず伝えるようにしましょう。
血液採取の実施と検査結果報告の流れ
カウンセリング後、医師の診察で血液検査が必要と判断されれば、看護師さんによって血液採取が行われます。
血液検査は少量の血液を採取するだけで、数分で終わります。採血の際に緊張しすぎると、迷走神経反射で倒れてしまうことがあるため、リラックスして受けるようにしましょう。
血液検査の結果が出るまでには、通常1〜2週間程度かかります。結果が出たら、再度クリニックを受診し、医師から結果説明を受けます。クリニックによっては、電話やオンラインで結果説明を聞くことが可能です。
血液検査の結果説明では、以下のような点について説明があります。
各項目について、基準値と比べて異常がないか、治療に影響はないかなどを詳しく説明してもらえます。血液検査の結果は数値だけで判断するのではなく、年齢、性別、生活習慣などを考慮して総合的に判断されます。
血液検査の結果を踏まえ、適切なAGA治療の方法や薬の処方などについて、医師から提案があります。治療方針は、症状や希望、血液検査の結果などを考慮して医師と相談しながら決定していきます。
治療にかかる費用や期間についても、具体的に説明があります。治療費は治療内容や使用する薬剤によって異なります。治療期間は、症状や治療の進捗状況によって個人差があります。
治療方針や費用などに納得できれば、いよいよAGA治療の開始となります。疑問点や不安なことがあれば、遠慮せずに医師に相談するようにしましょう。
AGA治療を開始した後も、治療の経過を判断するために定期的に血液検査が必要になる場合があります。
血液検査を受ける頻度は一般的に数ヶ月から1年と開きがあり、AGAの進行状況や個人の状況によっても異なってきます。
医師からの指示を受け、適切な頻度で検査を受けることが大切です。
AGA治療における血液検査の費用の目安
AGA治療を始めるとなると、検査の費用も気になる方がいるのではないでしょうか。自由診療となるAGA治療では、クリニックによって費用設定が異なるため、事前に目安となる金額を確認しておくことが大切です。
ここでは、AGA治療における血液検査の費用について解説します。
一般的なAGA治療の血液検査の費用の相場
AGA治療で行われる血液検査の費用は、クリニックや検査項目によって異なってきますが、一般的には5,000円から10,000円が相場です。
基本的な血液検査では、肝機能検査、腎機能検査、糖尿病検査などが行われます。これらの検査は、AGA治療薬の服用が体に与える影響を調べるために非常に重要です。
遺伝子検査や追加検査の費用
基本的な血液検査に加えて、遺伝子検査やより詳細なホルモン検査などの追加検査を行う場合、別途費用がかかります。
遺伝子検査では、AGAの発症リスクに関連する遺伝子の型を分析し、自分が遺伝的にAGAになりやすい体質かどうかを知ることが可能です。
AGA治療の遺伝子検査の費用は10,000円から30,000円が相場です。
ホルモン検査では、血液中の男性ホルモンの量を測定し、AGAの進行度合いなどを確認します。
費用の相場は5,000円から10,000円程度です。
これらの追加検査は、AGAの原因をより詳しく特定したり、最適な治療方法を検討したりするために役立ちます。追加検査を受けるかどうかは、医師の診断や患者さんの希望によって異なります。
AGA治療の検査費用を抑える方法と支払い方法
AGA治療の血液検査費用を抑える方法は、いくつかの方法があります。
AGA治療専門クリニックの中には、初めての方限定で初診料や血液検査費用が無料になるキャンペーンを行っているところがあります。このようなキャンペーンを利用することで、費用負担を抑えましょう。
また、薄毛の治療は健康保険が適用される場合があることも確認しておきましょう。AGA治療は自由診療であるため、基本的に健康保険は適用されません。しかし、甲状腺疾患や貧血など、他の病気が原因でAGAの症状が出ている場合は、健康保険が適用されることがあります。
支払い方法についても、クリニックによって、現金、クレジットカード、医療ローンなどさまざまな支払い方法に対応しています。自分に合った支払い方法を選ぶことで、費用負担を軽減しましょう。
AGA治療はクリニックによって費用や支払い方法が異なるため、事前にしっかりと確認することが大切です。
血液検査の結果に基づくAGA治療の選択肢
血液検査の結果を踏まえ、あなたのAGAの進行状況や体質、そしてライフスタイルに最適な治療法を考えていきましょう。
AGAの治療は薬物療法が多い
AGA治療で、最初に検討されることが多いのが薬物療法です。AGA治療によく使われる薬には、大きく分けて2つの種類があります。
フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)などの内服薬は、AGAの原因となる男性ホルモンの働きを抑える効果があります。AGAの原因となる男性ホルモンの生産を抑えることで薄毛の進行を食い止め、髪の毛の成長サイクルを正常に戻す効果が期待できます。
血液検査の結果、肝機能に問題がないと判断されれば、これらの薬が処方されることが多いです。
しかし、薬の効果や副作用は人それぞれなので、性欲減退や勃起機能不全などの副作用が現れることもあります。副作用が心配な方は、医師に相談して自分に合った薬を選ぶことが大切です。
外用薬は頭皮に直接塗布することで効果を発揮します。内服薬と比べて体全体への影響が少なく、副作用が少ないです。
ミノキシジルは、血管を広げて血流を良くする効果があり、頭皮に塗布することで毛根に栄養や酸素が行き渡りやすくなり、髪の毛の成長を促進すると考えられています。
薬物療法は、AGA治療において非常に有効な手段ですが、あくまで医師の指導のもと正しく使用することが大切です。
投薬以外のAGAの治療方法
薬物療法以外にも、AGA治療にはいくつかの方法があります。
メソセラピーとは、髪の毛の成長に必要な栄養成分を頭皮に直接注射する治療法です。メソセラピーで使用される針は非常に細く、痛みはほとんどありません。
メソセラピーでは、髪の毛の成長を促進する効果のある成長因子やビタミン、アミノ酸などを頭皮に直接注入します。これらの栄養成分は、通常、食事から摂取しますが、AGAの人は頭皮に栄養が行き届きにくくなっているため、直接注入することで効率的に栄養を補給することができます。
自毛植毛は後頭部など髪の毛の残っている部分から毛根を採取し、薄毛の部分に移植する治療法です。自分の髪の毛を移植するため、拒絶反応が起こりにくく、高い確率で髪の毛が生えてくるというメリットがあります。
自毛植毛は局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。また、手術後も入院の必要はなく、日常生活にすぐに復帰することができます。
AGA治療において血液検査は、薄毛の原因がAGAかどうか、薬の適性、効果の予測などを確認するために欠かせないプロセスです。検査項目は、肝機能検査、腎機能検査、血糖検査、脂質検査、血球検査などの一般的な項目に加え、遺伝子検査やホルモン検査などの追加検査を行う場合もあります。
血液検査の結果に基づいて、薬物療法、外用薬、メソセラピー、自毛植毛などの治療法を選択し、生活習慣改善と合わせてAGA治療を進めていきます。
AGAは進行性の病気なので、治療をせずに放置すると、薄毛が進行してしまう可能性があります。「まだ大丈夫」「そのうち治るだろう」と安易に考えず、まずは専門医に相談することをおすすめします。